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東京高等裁判所 平成10年(行コ)163号 判決 1999年4月20日

主文

一1  原判決主文一項中、被控訴人西川治兵衛及び被控訴人田島俊秀に関する部分を取消す。

2  被控訴人西川治兵衛及び被控訴人田島俊秀に対する部分の訴えを浦和地方裁判所に差し戻す。

二  控訴人の被控訴人土屋義彦及び被控訴人島野實郎に対する本件控訴を棄却する。

三  控訴人の被控訴人土屋義彦及び被控訴人島野實郎に対する控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らは埼玉県に対し、連帯して金一三一〇万二三九〇円及びこれに対する平成八年一一月一〇日から支払済みまで年五分の金員を支払え。

3  訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二  当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加するほかは原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

原判決一五頁一一行目末尾に「その結果、右各旅費は、出納局財務管理課において同月一六日に支払決定がなされ、同月一八日に右議員ら及び右随行員渡辺に直接交付された。」を加える。

理由

一  当裁判所の判断は、被控訴人土屋及び同島野に対する本件訴えは不適法であり、却下すべきものであると判断する。その理由は、原判決理由二の1及び2の説示のとおりであるから、これを引用する。

二  当裁判所は、控訴人の西川及び同田島に対する本件訴えは適法であると判断する。

1  本件の支出負担行為及び支出命令、それに基づく金員の支出の経緯についての認定は、原判決理由二の3(一)(1)の説示のとおりであるから、これを引用する。

2  被控訴人らは、「本件監査請求は、被控訴人西川及び被控訴人田島の各財務会計上の行為である本件旅費に関する支出負担行為及び支出命令を問題とするものであるから、監査請求の期間は右被控訴人らの右行為がされた平成七年八月九日から起算すべきであって、平成八年八月一三日に行われた本件監査請求はその請求期間を徒過している不適法なものである。したがって、被控訴人西川及び被控訴人田島に対する本件訴えは不適法である。」旨主張するが、乙第一号証、弁論の全趣旨によると、本件旅費等の支払は、支出負担行為及び支出命令をもってその支出行為が完結するのではなく、支出命令に続く財務会計上の払出手続である出納局審査課での受付、審査を経て出納局財務部管理課の支払決定とその現実の支払によって完結するものであることが認められる。右支払決定とそれによる現実の支払は、支出命令に基づく財務会計上の一連のいわば機械的な執行手続行為に過ぎないものであるが、支出命令を財務会計上の行為として現実化し、支出命令を外部的に完成させ、その適否及びそれによる地方公共団体への損害の発生の有無を客観的に判断することを可能ならしめる一体の行為と解すべきである。

したがって、被控訴人西川及び被控訴人田島らに対する本件監査請求の起算点は、被控訴人らの右支出命令が完結した日とされるべき前記議員ら及び随行員渡辺に現実に旅費が交付された平成七年八月一八日であると解すべきであるから、その日から一年内になされた本件監査請求は、その請求の期間を遵守してなされたもので適法である。

したがって、被控訴人らの本案前の右抗弁は理由がない。」

三  結論

以上によれば、控訴人の被控訴人土屋義彦及び被控訴人島野實郎に対する本件訴えは不適法であるが、被控訴人西川治兵衛及び被控訴人田島俊秀に対する本件訴えは適法である。

よって、控訴人の被控訴人西川治兵衛及び被控訴人田島俊秀に対する控訴は理由があるので原判決主文一項中右被控訴人らに関する部分を取消して、同被控訴人らに対する訴えを浦和地方裁判所に差し戻すこととし、控訴人の被控訴人土屋義彦及び被控訴人島野實郎に対する控訴は理由がないので棄却することとして、主文のとおり判決する。

(編注) 第1審判決及び第2審判決は縦書きであるが、編集の都合上横書きにした。

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